3-2.品詞の対比
文章の対比の次は品詞について比較してみよう。
日本語と英語では、品詞についての扱い方が違うところがある。ここでは、それについて触れることにする。
■名詞・代名詞
種類により名称の違いは多少あるものの、扱い上の違いはない。
日本語で名詞は、英語でも名詞である。
■動詞
日本語には活用があるが、英語にはない。
形にこだわる英語では、日本語の活用それぞれが「・・文」、「・・形」、「・・用法」とかいうように形として表される。
日本語 | 未然 | 連用 | 終止 | 連体 | 仮定 | 命令 |
英語 |
否定文 未来形 |
副詞的用法 |
述語動詞 (肯定文) |
形容詞的 用法 |
仮定法 | 命令文 |
細かい部分については、完全とは言えないが、だいたいこんなところである。
** | 未然 | ・・・ | これから起こることを表す形 |
|
連用 | ・・・ | 用言に連なるときの形 |
終止 | ・・・ | 文を終了するときの形 | |
連体 | ・・・ | 体言に連なるときの形 | |
仮定 | ・・・ | 仮定するときの形(もし・・ならば) | |
命令 | ・・・ | 命令するときの形 |
■形容詞
やはり日本語にある活用は、英語にはない。
また、英語で形容詞として扱われるのは、日本語の活用でいう終止形と連体形だけである。
日本語 | 未然 | 連用 | 終止 | 連体 | 仮定 | 命令 |
英語 | 未来形 | 副詞 | 形容詞 | 形容詞 | 仮定法 | ・・・ |
■形容動詞
日本語では活用により形容詞と形容動詞は区別されるが、英語ではこの区別はない。
形容動詞も、英語では形容詞と呼ばれる。
したがって、前述の形容詞と同じように、日本語の活用でいう終止形と連体形だけが、英語では形容詞として扱われる。
■副詞
日本語で副詞は英語でも副詞である。しかし、扱い方の違う所がある。形容詞の比較表を見ていただきたい。日本語の形容詞の連用形を英語では副詞として扱っている。
英語では、純粋な副詞だけでなく、形容詞・形容動詞の連用形も副詞と呼ぶ。
ここまでの比較で気付くことがあると思う。それは、品詞に対しての見る角度の相違である。
日本語の場合、「この活用ができるから動詞」とか「この活用ができるから形容詞」とかいうように、活用が品詞を判断するひとつのポイントだった。しかし、英語の場合は、その品詞の特徴を持ち合わせていれば、その品詞なのである。前述の比較表をもう一度見ていただきたい。終止形に関しては、その品詞を代表する部分だからいいとして、ここでよくみていただきたいのは、連体形と連用形の部分である。
動詞の連体形 ⇒⇒⇒ 形容詞的用法 | 形容詞(形容動詞)の連体形 ⇒⇒ 形容詞 |
動詞の連用形 ⇒⇒⇒ 副詞的用法 | 形容詞(形容動詞)の連用形 ⇒⇒ 副詞 |
連体修飾語になるのは形容詞の特徴であった。だから英語では、この特徴を待ち合わせている部分を、動詞の場合は形容詞的用法、形容詞(形容動詞)の場合は 形容詞と呼ぶのである。また、連用修飾語になるのは副詞の特徴であった。だから英語では、この特徴を持ち合わせている部分を、動詞の場合は副詞的用法、形 容詞(形容動詞)の場合は副詞と呼ぶのである。
※英語で言う | 形容詞とは名詞を修飾するものすべて |
|
副詞とは文章構成上「いらない語」すべて |
■連体詞
連体修飾語だけになるのが連体詞である。これは形容詞の特徴であるから、英語では形容詞である。日本語の連体詞は英語では形容詞として扱われる。
■接続詞
日本語の接続詞は英語でも接続詞である。しかしそれだけでなく、日本語では接続助詞と呼ばれるものも、英語では接続詞として扱われる。また、従属接続詞と呼ばれる日本語では接続詞として扱わないものも、英語にはある。
※従属接続詞についての解説は、ここでは避けることにする。
■感動詞
日本語の感動詞は英語では間投詞である。これは呼び方の違いだけで、使い方は同じである。
■助詞
形にこだわる英語では、単語を置く位置や文自体の形により、それぞれの役割が決まっていく。だから、その部分についての助詞にあたるものは表す必要がない。(文章の対比の英文のD参照)また、接続助詞のように、英語では接続詞に扱われるような助詞もある。
しかし、数多くある助詞がこれだけですべて表しきるはずがない。
それでは、これ以外の部分で使われているさまざまな助詞についてはどのように表すのだろう。それは次のように考えられる。
英文にした時、形の上に載らない助詞(役割がないところに使われているため省略できない助詞)にあたるものは、英語では前置詞として表される。
■助動詞
やはり助動詞についても、扱い方には相違がある。もちろん同じ扱いをする部分もあるのだが、形として表されるもの(受動態や否定文)、助動詞として扱われるものの形として表した方が自然なもの(未来形)、日本語では連語なのに英語では助動詞扱いするもの(・・しなければならない,・・してよい)などさまざまである。英語でいう助動詞とは、基本的に「動詞を助けるものが助動詞」と考えるのが自然である。
例が不十分で完全とは言えないが、だいたいこんなところである。
次に、私が「英文の形」について考え始めるきっかけとなった直接原因である「be動詞の解釈」について話そう。